消化器癌術後外来
消化器癌術後サーベイランスの必要性
消化器癌(食道癌、胃癌、大腸癌(結腸癌・直腸癌)など)の診断に至った場合、治療前に病期診断を行います。外科的治療が適応となれば手術となります。病理結果から術後病期診断が得られ、その後一定期、慎重な術後フォローアップを行う(サーベイランス)必要があります。複数回受けなければならない消化器内視鏡検査は精神的・身体的の両面からのストレス負荷を伴います。当院ではそういった方へ少しでも侵襲の少ない胃カメラ検査・大腸カメラ検査をご提供することで消化器癌術後の皆様へすこしでもお役立てできればと考えております。
手術を行って頂いた高次医療機関様と綿密な病診連携を行うことが極めて大切となります。2次癌病変の早期発見、再発予防などを確認するため、当院で定期的な胃カメラ検査・大腸カメラ検査のご用命頂いている方が年々増えております。
胃癌の術後サーベイランス
進行胃癌の診断に至り、外科治療にて癌病変を標準治療にて決められた周囲のリンパ節と切除(リンパ節郭清)の上、術後再建といって食物が問題なく通過できるよう切除後の消化管をつなぎ合わせる手術を行います。
胃癌の術式
胃全摘術 | 噴門部に近い癌や、胃を残すことが困難と判断した場合に採用される術式 |
再建術式 | 食道空腸吻合術(ルーワイ吻合) |
幽門側胃切除術 | 胃の肛門側2/3を切除する術式 |
再建術式 |
BillrothⅠ法再建術、Roux en Y吻合術 |
幽門温存胃部分切除術 | 噴門部、幽門部から癌病巣まで距離があり、ダンピング症候群など予防目的に幽門部を温存した術式 |
噴門側胃切除術 | 噴門部~体上部の胃癌で胃上部1/3~1/2を切除する術式 |
再建術 | ダブルトラクト法再建術、食道残胃吻合術 |
胃癌手術後の問題点
第1の問題点は胃切除術を行うことで生理的な胃の機能が低下し胃切除後症候群の問題生じます。ダンピング症候群、逆流性食道炎症状、貧血症、癒着性イレウスなど様々な症状が起こりうります。食生活など生活習慣の改善指導を含めた計画的な治療が必要となってきます。そして第2に再発、残胃癌、重複癌の早期発見が極めて大切となります。腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)並びにCT検査、そして胃カメラ検査によるサーベイランスが必要です。再発時の腫瘍マーカーの上昇は画像診断より2~3カ月程度先行するとの報告もあります。当院ではご紹介頂いた高次医療施設様と綿密な病診連携を行うことで消化器癌医療の質の保証や安全の確保に少しでもお力添えできればと願います。
大腸癌の術後フォローアップ
大腸癌治療について
内視鏡治療 |
経肛門的切除術 |
手術治療(腹腔鏡下手術、開腹手術) |
化学療法 |
放射線療法 |
大腸癌の診断に至った場合、癌の進行度と部位により術前病期診断を行い治療法を選択します。上記単独もしくは複数を組み合わせて治療ストラテジーを練ります。
大腸癌手術の予後について
大腸癌は手術治療で取り切れていると思われても再発することがあります。病期が進行するにつれ再発率は上昇すると報告されています。大腸癌は発生部位により悪性度が異なることが分かっており(結腸<直腸、直腸で左側<右側が悪性度が高いと言われています)。
術後再発率 ステージI 3.7%、 ステージII 13.3%、 ステージIII 30.8%(大腸癌研究会プロジェクト研究1991~1996年)
再発した場合は再発部位と病変数により治療法が異なります。治療を行うことで治癒できるものとそうでないものがあるため、まずは再発時の現状を正確に検査することが必要となります。その後、治療法が決定されます。大腸癌の予後は5年生存率で表されます。ステージが進行するほど生存率は低下すると報告されています。
ステージ0 94.0%、 ステージ1 91.6%、 ステージII 84.8%、 ステージIIIa 77.7%、 ステージIIIb 60.0%
(大腸癌研究会・大腸癌全国登録(2000~2004年度)。ステージ分類は大腸癌取扱い規約第6版による)
術後サーベイランス
サーベイランスとは再発を早期に発見し治療することで予後を改善することを目的とする術後の定期検査のことを意味します。特に異時性多発癌の早期発見に大腸カメラ検査は有用である。
腫瘍マーカー | 血清CEAと血清CA19‒9を測定 |
胸部CT | 肺転移、縦隔や頸部リンパ節転移などを検索 |
腹部CT | 肝転移などを検索 |
骨盤CT | 骨盤CT 直腸癌の局所(骨盤内)再発などを検索 |
MRI | 肝転移、骨盤内再発巣を検索 |
大腸内視鏡検査 | 吻合部再発、異時性多発大腸癌を検索 |
大腸癌は進行度により再発のリスクが異なります。外科治療を選択される症例は比較的進行度の高いケースが多いため、すなわち術後再発のリスクも低くありません。大腸癌の吻合部再発や異時性多発大腸癌の早期発見を行うことで治癒に至るケースもすく少なくなくありません。定期的な腫瘍マーカー測定とCT検査などの画像検索を組み合わせることで再発予防に努めます。そして、大腸癌術後で大切な検査の1つは大腸内視鏡検査です。前述したように、術後吻合部の再発や、大腸に新規病変が出来ることも少なくないため、定期的な注意深い大腸粘膜面の観察が必須となります。定期的に行う検査であるからこそ、少しでも苦痛が少なく正確な検査が望まれると思います。
出展 日本食道学会HP
国立がん研究センター東病院HP
日本臨床外科学会HP