ピロリ菌感染症 Helicobacter pylori infection
ピロリ菌現感染・除菌治療
慢性の胃痛/胃部不快感/慢性胃炎・鳥肌胃炎/ピロリ菌除菌/ピロリ菌の相談
当院ではヘリコバクターピロリ菌の除菌治療を積極的に行っています。ピロリ菌の検査は呼気で判定する尿素呼気試験、胃カメラで胃粘膜を採取する検査、便を採取する便中抗原検査、血液で確認する抗体検査等があります。その方に合った検査方法をご提示致します。ピロリ菌治療はガイドラインに沿って検査を行い保険診療の範囲内で治療の完結ができます。内服薬で除菌できますのでお気軽にご相談ください。
ただ、どうしても胃カメラ検査は絶対に受けたくないがピロリ菌の有無を知りたい等の要望がございましたら自費診療で対応可能ですのでご相談下さい。
ピロリ菌の除菌ガイドラインについて
日本人の「ピロリ菌」感染者の数は約3,500万人と言われています。
ピロリ菌を除菌することによって、ピロリ菌が原因であろうと考えられる病気の改善や予防できる可能性が有るのです。
ほとんどのピロリ菌感染者は、症状も無く健康に暮らしています。
日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは、ピロリ菌が関連する病気の治療や予防の為に、ピロリ菌感染者すべての除菌療法を受けることを強く勧めています。
ガイドラインによる除菌対象者
日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは、ピロリ菌の除菌療法の対象になる人を定めています。
ピロリ菌感染による胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、突発性血小板減少性紫斑病、早期胃がんに対する内視鏡的治療後の胃の各患者で、ピロリ菌に感染している人になります。
ピロリ菌感染胃炎は、慢性、急性の炎症であり、日本人の多くは慢性胃炎から委縮性胃炎に移行していきます。
組織学的な慢性胃粘膜の炎症状態が「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」であるといわれます。
これらの症状や疾病に該当していても、除菌療法が必要かどうかは主治医と相談したうえで決めていきましょう。
小児期感染から除菌治療の目的と意義
ピロリ菌はほとんどが免疫力の弱い小児期に感染します。
汚染された水や食品、保菌者である親との接触、家庭内経口感染、保育園や幼稚園などの施設感染、消毒の不十分な歯科治療などの医原性感染などが有ります。
一度感染すると生涯胃に住み続け、ピロリ菌から発生するアンモニアや毒素によって胃粘膜が炎症を起こします。
何年も掛けて慢性胃炎に進行して、胃粘膜の防御機能を低下させていきます。
やがて胃の委縮、胃粘膜の障害などが起こり、消化性潰瘍や胃がんなどの疾患に繋がると考えられています。
除菌療法は、単に胃炎の症状改善だけが目的ではなく、胃や十二指腸潰瘍などの治療、胃がんをはじめとするピロリ菌関連疾患の予防、そしてピロリ菌保菌者からの感染経路を絶つことで新しい感染者を増やさないことに意義があります。
正式名称は「ヘリコバクター・ピロリ」といい、「ヘリコ」は螺旋状、「バクター」はバクテリア(細菌)、「ピロリ」は胃の出口のことで十二指腸へとつながる幽門部を意味する「ピロルス」というラテン語が由来で、胃の幽門部から最初に発見された菌です。
ピロリ菌は酸素にさらされると死んでしまう菌で、大きさは約3μm、数本の鞭毛を高速回転することで胃内を自由に移動します。
ピロリ菌が胃酸(酸性)の中で生育できるのは、菌が持つ酵素(ウレアーゼ)で尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、アンモニア(アルカリ性)によって胃酸を中和することで自身を酸から守っているからです。
ピロリ菌は胃酸濃度が一定化しない幼児期までの間に、口から入り込み、胃の中に住みつき、慢性胃炎・潰瘍・胃MALTリンパ腫・胃がん等を起こすと言われています。
日本でのピロリ菌感染者は多く(50歳以上の方の80%以上とも言われています)、特に高齢であるほど感染率は高いです。
感染ルートは飲み水(井戸水)、食べ物、親から子への食べ物の口移し等が主な原因であり、成人での感染はほとんどありません。特に、あまり衛生環境良くない状況で幼少期を過ごした高年齢層の方はピロリ菌感染の可能性が高いようです。
胃内へのピロリ菌の感染を契機に慢性活動性胃炎が起こり、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃MALTリンパ腫・胃がんの原因を引き起こします。よって除菌することで胃がん予防に繋がります(ピロリ菌未感染の胃からの発がん率は1%程度と報告があります)。
心配な方はまずはピロリ菌検査を行うことをお勧めします。そして、ピロリ菌陽性の方は胃・十二指腸潰瘍、胃がんを予防するためにも除菌治療をお勧めします。
ピロリ菌検査は胃カメラを用いる検査・用いない検査がありますので外来でご相談お願いします。ピロリ菌がいた場合は内服薬にて除菌(1次除菌)を行います。
前回ピロリ菌について若干ご説明させていただきました。今回はピロリ菌の除菌後の効果判定、除菌薬、ピロリ菌検査についてご説明いたします。
まず、ピロリ菌除菌成功により胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発リスク、胃がん発症のリスクを抑制することができると言われています。また、若いうちに除菌するほど、上記のリスク抑制効果は高いと言われています。
ピロリ菌の1次除菌後、しばらくして除菌効果判定検査を行い、除菌成功・不成功を確実に評価致します(条件を満たせば2次除菌まで保険適応で対応可能です)。
一旦除菌成功すると再発する確率は数%と低く、ピロリ菌感染を繰り返し調べる必要はありません。ただ、除菌後胃がんの報告もありますので、除菌後も定期的な内視鏡検査を受けることが大切です。
除菌薬は一般に、2種類の抗生物質と1種類の酸分泌抑制薬を朝夕2回1週間服用します。胃酸分泌をしっかり抑えることで抗生物質が力を発揮します。1次除菌で除菌不成功の場合は、薬剤を変更して2次除菌を行います。
以前と異なり、最近の除菌治療成功率は、1次除菌、2次除菌ともに90%前後であり、2次除菌(保険適応範囲内)までで大半のピロリ菌除菌が可能となっています。
2次除菌不成功の場合、3次除菌療法(保険適応外)になりますのでご相談お願い致します。
除菌薬内服で全例除菌成功とならないため、除菌後効果判定が非常に重要となります。
ピロリ菌検査は胃カメラを行わない検査と胃カメラ検査を行う検査があります。
一般に下記6種類の検査方法があります。詳細は診療時にお尋ねください。
A.胃カメラを行わない検査
①尿素呼気試験
空腹時に薬剤服用前後の呼気を検査用の袋に吹き込み、その採取した呼気を使って診断する検査。
②血清ピロリ菌抗体検査
ピロリ菌に感染すると体内の白血球は抗体という物質を作ります。血中の抗体を調べる検査。
③尿中ピロリ菌抗体検査
ピロリ菌に感染すると体内の白血球は抗体という物質を作ります。尿中の抗体を調べる検査。
④便中ピロリ菌抗原検査
便中のピロリ菌の抗原を調べる検査。
B.胃カメラを行う検査
①迅速ウレアーゼ試験
胃カメラ生検で採取した胃粘膜を試薬につけ、ピロリ菌が持つ酵素(ウレアーゼ)の活性を利用してその化学反応でピロリ菌を調べる検査。
②鏡検法
生検で採取した胃粘膜に特殊染色(ギムザ染色)を行い直接顕微鏡をのぞいて菌を探す検査。
③培養法
生検で採取した胃粘膜を用いて、ピロリ菌を培養する検査。培養するため時間を要する。
今回は胃カメラ検査をすると見かけることがある鳥肌胃炎についてご説明させていただきます。
鳥肌胃炎
内視鏡での胃粘膜の肉眼所見が鳥肌のように小さな凸凹として見えることから命名された胃炎です。
病理組織学的にはリンパ濾胞の過形成として確認され、それらが小さな隆起を形成するため、内視鏡では鳥肌のように凸凹した粘膜に見えます。
鳥肌胃炎は特に若年女性のピロリ菌感染がある方に多いとされます。悪性度の高い未分化型胃癌のリスク背景であるとの報告もあり、注意が必要です。
鳥肌胃炎と診断されたら、早期のピロリ菌治療を行うことが大切で、その後も定期的な内視鏡検査が大切です。
ピロリ菌家族例があり、若い方で、慢性に胃部不快感、心窩部違和感等を認める方は一度胃カメラ検査、ピロリ菌検査をお勧め致します。
気になる方はお気軽にご相談下さい。